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本格海上飛行完了 [pilot]

小さな薄い雲が浮かぶ朝。冷え込む飛行場から離陸。エンジンは乾いた音で絶好調。飛行場を離れ、2500ftで東へ。ナビゲーション開始。風の見積もりを間違っていたと気付くのに時間はかからなかった。思ったよりも吹いていない。そうすると必ず計画コースから外れる。それでもまず、どの程度ずれるかを見ながら飛ぶ事で風を読み、新しい進路を算出できる。それでも心理的には、どうしても風を差し引いた方向へ行きたいらしく、機はなにかにつけ北側へそれる。そこに最初の中間点が見えてきた。目視で向う宣言を行い直行。最初の見積もりよりも7°くらい北へ向けてちょうどいい事になる。ちょっとずれ過ぎかな、と思いつつも目標地点へ。見えている目標ほど確実なものはない。

中間点を過ぎ、次の目標を探しながら飛んでいると、周囲の地形が地図のコース上の地形と大きく異なっている事に気付いた。コースから外れていた。最初の中間地点を振り返り、もう一度地図と見比べると、地上には地図にはない大きな道路があった。思い込みで目標を見間違ってしまった。冷静な頭で考えれば、方位と風があまりにも一致していない事で気付けたはずだが、見えた物が目標に似ているだけで、そう思い込んでしまっていた。これが希望的観測? 右斜め前方にコース上の大きな目標。この池は絶対に見間違えられない型をしている。時間を無駄にしないため、すぐにはコースに戻らず目標まで直行。やがて最初の変針点。許容誤差の範囲、ほぼ時間どおり。

次は海に向うコース。地形上いくつも大きな目標があり、中間までは絶対にそれる事が考えられないわかりやすい地形。大型機が5000ftくらいで左斜め上空を追い越して行く。こちらは2500ft、問題ないセパレーション。着陸前で速度を落としているとはいえ、相手は Boeing なので200KT前後だろうか。こちらが95KT程度なので、およそ倍の速度。相対スピードなので、まるで相手もセスナ程度の速度でゆっくり(それでも充分速いのだが)通り過ぎて行く。優雅だ。やがてこちらはちょっとした山岳地帯を飛び越えて海岸線に出た。小さな街、輝く海原、頭の上を押さえるように薄く張り付いている雲。気持ちよい風景だけど楽しむ余裕はなく地点確認。時間は計算どおり。悪くない。島に向って方位を修正。いよいよ初めての本格的な海上飛行。できれば高度を上げたかったけれど、雲が多くそうはいかない。水平線のぼやけ具合で水平を見失う事があるのは知っていたが、まさにそういう天候なので、姿勢計に注意しながら飛ぶ。教官と景色や距離、視程の話をしながら飛ぶ。座学で学んでも実体験として見なければ頭に残らない事は多い。絶好の学びのチャンスでもあり、また飛行中とはいえ静かにさせてくれないのも、訓練のうちなのだろう。話していても、やるべき事があるポイントでやるべき事を確実にこなす必要がある。

雲が低く。頭を抑えられての飛行が続く。その代わり、海上の船や波だっている部分などを確認しつつ不時着水の事について教わった。目測でどの程度の風速か当ててみろと言われた。僕は海が近い街で生まれ育った。白い波が立つ風の強さはおおむね体で知っている。飛行機に乗るようになって、風の強さを数字で意識するようになり、その波の立つほどの風速が5m(10kt)程度と測定される事を知っていた。でも、自分が飛ばしている飛行機から海面を見おろしながら、風速を当てさせられるとは考えた事もなかった。経験則から5m以上の風と推測。正解。ちょっと嬉しい。

漁船が何艘も集まって漁をしているようだった。広場の陽だまりに集まった猫の集会を上から見おろしているような感じ。どちらも魚が好きだろうから、連想としては悪くない。やがて島が近づき、着陸の準備にかかる。初めての「ラジオ」との通信。情報圏を飛ぶのは初めて。でも、やりとりする内容は、いつもの飛行場に似ている。状況も良かったため難なくこなせた。

降下開始。滑走路がはっきり見えてくる。島の大きさからすると、滑走路の長さが際立つ。島の姿が美しい。計画どおり、滑走路の直上を高高度で通過、一旦反対側の飛行経路上空を通過して降下旋回。自家用では降下と旋回は同時に始めなくてよいと言われた事もあったが、安全にできるのならば、使える手は使うという方針。せっかく教官同乗なのだし、教わるチャンスになったならばそれもしめたもの。しかし難なくできたので指導はない。着陸経路へ進入。

しかし、着陸は散々な結果。島の地形で風が難しい事は何度も聞いていたけど、実際に吹かれて混乱した。滑走路にさしかかるあたりから強烈な背風が下に吹き込む。クッションに乗って前向きに押し出されるように滑っているようになった。レストランで引かれた椅子に座り損なって、テーブルに近付いて座ってしまう感じ。機が前に押し出されながら、持ち上げられて降りられない。滑走路はいつもの倍の長さがあるので、最悪、真ん中までに接地できればよいと計画済みだった。まだまだ余裕があるので着陸続行。すると今度は一気に風が抜けて降り始める。少し機首が下がって速度が増す。思いのほか速度がついたようで、わずかに上昇。バルーニングという現象。失速対策で、一旦わずかにパワーを足そうか迷った。多分、ここでゴーアラウンドすべきだったのだろうと、後で思った。いつもより広い滑走路の注意点は、自分が実際の高度よりも低い所にいる錯覚。だから自分は、まだ高い所にいるかもしれないと疑う事も大事。 でも本当に大事なのは錯覚に惑わされない感覚だ。これでそろそろ接地できるかなと思いながら、そっと機首を上げた所で、もうちょっと起こしてと声がかかる。そんなに高くはなかったようだ。なんとかの接地。あのまま降りれば三点接地気味だっただろう。これは脚を痛めることもあって、避けるべき接地。はぁ... 散々の着陸だった。

少し休憩。再びの離陸で、基地に戻った。美しい海、港。海上飛行は終了。帰還。

この日、出来は概ね良かったが、着陸は怪しかった。着陸は死ぬほど(死んではならないのですが)練習したいものです。それも思うようにはいないのが訓練の事実で。次回はナビとタッチアンドゴーのコンビネーション。これを制覇できれば、久々のナビソロが見えてきます。でも、もっともっと着陸を練習したい。限られたチャンスをどれほど有効に活かせるか。地上でも訓練、その準備が、常に続いています。
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